「地震・噴火・津波車両全損時一時金特約(地震等による車両全損一時金特約)」は、地震などの災害で、車が全損した場合に50万円程度の一時金を支払ってくれる特約です。
一般的な車両保険では、火災や台風、洪水といった自然災害による車両の被害に対しても、保険金が支払われます。しかし、その自然災害には、地震や噴火、津波は含まれていません。
そのため、たとえ車両保険に加入していたとしても、地震や津波によって車が破損した場合は、保険金は一切支払われないため、修理費や買い替え費用などはすべて自腹になってしまいます。
近年、日本でも大規模な地震やそれに伴う津波が増加していますが、そういった災害による車の被害を補償してくれるのが、この地震・噴火・津波車両全損時一時金特約です。
掛け金は、年額5000円程度です。
「地震・噴火・津波車両全損時一時金特約」で補償されるケース
「地震・噴火・津波車両全損時一時金特約」で補償される例としては、以下のようなものが挙げます。
補償されるケース
- 地震で家が倒壊し、車も押しつぶされた
- 津波で車がさらわれ見つからない
- 地震による火事が車に引火して全焼した
補償されないケース
- 地震で塀が崩れ、車に傷がついた
- 津波で車が流され、隣の家の車に衝突してドアが破損した
補償されないケースについては、いずれも全損には該当しないため、この特約の対象にはなりません。
特約の補償内容と保険金額
この特約で支払われる保険金は、車両保険と異なり、車の時価額などは関係なく、一律の料金となる会社がほとんどで、金額は50万円になっています。
つまり、400万円の価値がある車でも、50万円の車でも、支払われる保険金は一律50万円ということになります。(車両保険の金額が50万円以下の場合は、車両保険と同額)
もともと中古の安い車であれば、同程度の車を再購入しても、出費は大きく変わらないでしょう。しかし、高級車や新車の場合は、再購入のための手数料程度にしかなりませんし、ローンの残債がある人も、支払いの足しにはあまりならないでしょう。
なお、朝日火災など、ごく一部の保険会社では、車両保険の設定金額まで保険金が下りますので、高級車や新車の場合には、そういった保険会社を選ぶほうがいいでしょう(ただし、保険料は高くなります)。
「地震・噴火・津波車両全損時一時金特約」の適用条件
この特約が適用になるのは、車が「全損」した場合だけです。
ただ、この特約における全損は、以下のように車両保険における全損とは扱いが異なることに注意する必要があります。
車両保険 | 地震・噴火・津波車両全損時一時金特約 | |
---|---|---|
全損の定義 | ・車の修理費が保険金額を超える場合 ・修理不能の状態になった場合 |
・流失、または埋没し、発見されなかったとき ・運転者席の座面を超える浸水をこうむったとき ・全焼したとき ・損傷を修理できず、全損になったとき |
また、さらに細かい定義がありますが、以下のようなケースでも全損と認められ、補償の対象となります。
- 車の構造部分に重大な損傷があった場合
- エンジンの重大な損傷(シリンダーの損傷、電気自動車の電池部分の損傷)
以上のように、この特約の全損の定義は、より「地震・噴火・津波」による被害に限定された定義になっており、一部の破損などを修理するための保険金は支払われません。
この特約の注意点
この特約に加入するには、一番幅広い補償をしてくれる、オールリスク型の「一般型車両保険(ワイドカバー型)」への加入が必要です。特約加入後に、補償範囲が限定された「エコノミー型」などに変更した場合には、この特約が解除されることもあります。
また、多くの代理店型の保険会社では、この特約を取り扱っていますが、ダイレクト型(通販型)の保険会社では、チューリッヒとアクサダイレクトだけが、この特約を提供しています。
また、普通の車両保険で全損扱いになった場合、通常は保険会社が車を引き取ることになるため、保険加入者は廃車費用を支払うことはありません。
しかし、この特約で保険金を受け取った場合は、契約車の所有権は保険会社に移転しません。つまり、保険会社が車を引き取ってくれることはありませんので、車の廃車費用やそのための処理費用は、自分自身で支払わなければならないことに注意が必要です。
過去に存在した特約はもっと手厚かった
このように、補償がごく限定されたものになっている特約ですが、以前は「地震・噴火・津波車両損害補償特約」と言う、車両保険の補償範囲自体を広げ、車両保険の上限額まで損害を補償する特約が販売されていました。この特約は、保険会社側もあまり積極的に販売はしておらず、加入者も少数にとどまっていました。
その後、大規模災害の増加に伴って、地震や津波による被害に関しては、車両保険では補償されないことが知られるようになったことで、この特約に関する関心が高まりましたが、東日本大震災以降、各保険会社はその取扱いを中止してしまいました。
大規模災害が多く発生すると、一度に膨大な額の保険金の支払いが必要になり、保険会社の負担が増加してしまうことが原因です。
ただ、その後も加入者から、地震などの災害に対する補償を求める声が高かったため、現在は「地震・噴火・津波車両全損時一時金特約」として、保険金額と条件を限定する形に切り替えて、提供されています。
この特約に加入は必要か?
以上のように、この特約は補償される災害は増えるものの、リターンが50万円に限定していること、また全損のみ補償されることから、すべての人に加入が必要な特約とは言えません。
加入の検討に値するのは、以下のような人です。
- 地震・津波・噴火の被害のリスクが大きい人
- 災害後にどうしても車が必要な人(車がないと生活できない・仕事に必要など)
- 車両保険の設定額が50万程度の人
つまり、年額5000円の保険料の支払いと、50万円というリターンが見合う人だけ加入するのがいいでしょう。