自動車事故によって任意保険の契約者が死亡した場合、残された家族は精神的にも金銭的にも大きな損害を被ります。特に、一家における稼ぎ頭がいなくなった場合の被害額は、非常に大きなものになります。
また、死亡に至らなかったとしても、事故で重い障害を受けてしまった場合は、収入が断たれるだけではなく、被害者の介護が必要となり、さらに大きな費用や負担が増えます。療養期間が長くなれば、それだけ金銭的・肉体的な負担も増えるため、死亡するよりもずっとトータルの損害が大きくなることも当然ありえます。
ここでは、自分や家族などが重度の後遺障害を負ってしまうケースに備え、通常の補償に加えて、プラスアルファの補償をしてくれる各種の特約を紹介します。
後遺障害が発生した場合の補償
まず、自動車事故で後遺障害を負った場合に、自分や家族に対する補償を行ってくれる保険には、以下のようなものがあります。
相手の過失分 | 自分の過失分 | |
---|---|---|
相手の自賠責保険 | ○ | × |
相手の任意保険(対人賠償) | ○ | × |
自分の人身傷害保険 | ○ | ○ |
自分の搭乗者傷害保険 | ○ | ○ |
対車の事故で、相手にも過失がある場合は、相手の「自賠責保険」や、相手の任意保険の「対人賠償保険」から補償が行われます。
まず、自賠責保険からは、後遺障害の度合いに応じた等級によって、75万円~4,000万円が支払われ、残りの損失は相手の対人賠償から支払われます。この際に、自分の過失分は差し引かれますので、相手の過失が100%の場合(停車中に衝突・歩行中に轢かれるなど)以外は、自己負担分も発生します。
そして、自分の過失分の損害については、「人身傷害保険」に加入していれば、過失割合に関わらず、実際にかかった費用が補償されます。(人身傷害の設定金額が上限額。無制限なら実費が全額補償される)
さらに、「搭乗者傷害保険」に加入していれば、以上の自賠責・対人賠償・人身傷害からの支払いの有無とは関係なく、症状などに応じて、あらかじめ決められた額の支払いを受けることができます。
以上のように、基本的に必要な費用は自賠責~人身傷害などによって賄われますが、ここで取り上げる特約は、こういった補償に加えて、さらにプラスアルファを支払ってくれるものです。
後遺障害に関する特約の例
後遺障害を負った際に、別途保険金が支払われる特約としては、主に以下の2つのパターンがあります。
1.後遺障害を負った時に、追加で一定金額を支払ってくれるもの
- 損保ジャパン:人身傷害死亡・後遺障害定額給付金特約
- アクサダイレクト:重度後遺障害特別保険金/重度後遺障害介護費用保険金
など
2.後遺障害に伴って発生する費用を補ってくれるもの
- 三井住友海上:重度後遺障害時追加特約
1つ目の特約は、搭乗者傷害保険とほぼ同じもので、後遺障害と認定された場合に、一定金額を追加で支払ってくれます。
一方、2つ目の特約は、事故で重い障害が残った場合に、介護を行う上で必要な「自宅のバリアフリー化」や「福祉車両の購入費用」、「リハビリにかかる費用」などを補償してくれるものです。(以下は補償金額の例)
- 自宅の改造費用・福祉車両の購入費用など:500万円/名
- リハビリテーション訓練費用:1か月あたり5万円/名(最長2年間)
もちろん、1つ目の特約から支払われた費用を、バリアフリー化などに使用することは問題ありませんので、実質的には同じと言えますが、後者の場合は特定の用途にしか使えないということになります。
しかし、1つ目の特約の場合は、補償額の上限が100万円~500万円と、2つ目の特約と比べると補償額が低めになっているため、2つ目の特約に入っていれば、補償はより手厚くなります。
なお、同じような特約でも、「被害者1名に対して」の支払いではなく、「残された人(被扶養者)1名に対して」○○円を支払う、という形にしている保険会社もあります。これは、どちらかというと「育英費用特約」に近いと言えますが、被扶養者は子供だけではなく、配偶者であっても支払いを受けることができる点が異なります。
後遺障害に関する特約のメリット
この特約のメリットは、事故の過失割合などにかかわらず、一定額をすぐに支払ってくれることです。この点は、搭乗者傷害と同じです。
また、自宅のバリアフリー化などの作業を、保険会社が提携する業者に依頼した場合は、自分で立て替え払いをすることなく、保険会社から直接支払ってくれます。自分で一旦支払う必要がある場合は、一時的であれ、金銭的な負担が大きくなりますが、保険会社が直接支払ってくれるのであれば、貯金などがあまりない人の場合でも安心です。