「車両全損修理時特約(車両全損時諸費用特約)」は、事故で自分の車が全損したり、修理費用が新車価格の50%以上になった場合、車両保険金にプラスして、修理費用として一定金額を支払ってくれる特約です。
車両事故に会った場合、通常の車両保険から降りる保険金は、契約している車両保険の金額が上限になります。
しかし、車が古くなればなるほど、車両保険価額はどんどん低くなりますので、修理費用が車両保険価額を上回ることはよくあります。そのような場合でも、自腹で支払う出費を極力減らしてくれるのが、この特約です。
特に、クラシックカーなど、古いけれど気に入っている車に乗っており、破損が大きくても修理して長く乗り続けたいという人にとって、最もメリットが大きい特約です。
また、この特約は車両保険付帯の特約のため、車両保険への加入が必須です。
車両全損修理時特約の適用例
車両全損修理時特約に加入している場合と、加入していない場合で、どのように違いが出るのかを見てみましょう。
以下は、車両保険金額が40万円の車が事故に会い、修理費用が70万円かかった場合の例です。
特約なし | 特約あり | |
---|---|---|
修理費用 | 70万円 | 70万円 |
車両保険 | 40万円 | 40万円 |
車両全損修理時特約 | 0円 | 30万円 |
自己負担 | 30万円 | 0円 |
このように、修理費用が車両保険の上限額を超えた場合も、車両全損修理時特約はその差額を負担してくれるため、自己負担額を減らすことができます。
なお、上の例では車両保険の免責額は考慮していませんが、本来はいずれの場合でも車両保険の免責額は差し引かれますので、その分は自己負担額が発生します。
特約の適用条件と保険金額
この特約が適用されるのは、修理費用が車両保険価額(時価額)を超える場合ですが、時価額の50%~70%を超える場合としている会社もあり、その割合は保険会社によって異なります。
また、支払われる保険金の上限は保険会社によって異なりますが、30万円、50万円のいずれかになっています。
ただ、これはあくまでも上限のため、超過した修理費用が上限額に満たない場合は、その分支払われる保険料は少なくなります。また、満額に満たない分を現金で受け取ることもできません。
なお、保険会社によっては、破損した車を廃車にする費用や、別の車に買い替えるための費用を支払ってくれる特約(車両全損時諸費用特約)を扱っているところもあります。
この特約で支払われる保険金は、車両保険金額の5%~10%(10万円~20万円上限)程度です。
なお、この補償を別途特約とはせず、車両保険の一部として、自動付帯にしている保険会社も多くあります。
車両全損修理時特約への加入条件
車両全損修理時特約は、契約車両が「初年度登録日から○か月を超える」など、ある程度の年数が経過している車である必要があります。
この期間は保険会社によって異なりますが、「25か月を超える」としている保険会社が多いです。
また、この期間に満たない車の全損時の補償は、「新車買替特約(車両新価特約)」として提供されていますが、この二つの特約には重複して加入できません。
車両全損修理時特約の注意点
このように便利な車両全損修理時特約ですが、事故ではなく、盗難の場合には補償が適用されないことが多いです。ただ、一部、盗難でも補償してくれる保険会社もありますので、事前に確認しておくといいでしょう。
なお、この特約は修理を行った場合のみ、補償の対象になります。修理はせず、廃車にする場合は、この特約からは保険金は支払われず、車両保険からの支払いのみになります。