「新車特約(車両新価特約/新車買替特約)」とは、事故で車が全損したり、事故による修理費用が新車価格の50%以上になった場合、同じグレードの新車を購入するのと同じ金額を補償してくれる特約です。
新車で修理不能レベルの事故にあってしまった場合、失望の度合いは非常に大きいです。古い車であればあきらめはつきますが、ピカピカの新車に乗っていた場合は、修理したり中古車を購入するのではなく、また新車に乗りたいと思うのが人情でしょう。
しかし、通常の車両保険から降りる保険金は、契約している車の「時価額」までであって、新車の購入代金とはイコールではありません。つまり、少なくとも時価額と実際の新車代金との差額は支払う必要が出てきます。
また、買い替えを考えるレベルの事故で車が破損した場合、仮にその車を売って足しにしようとしても、事故車(修復歴車)と判断され、査定が大幅にマイナスになってしまいますので、新車との差額はさらに大きなものになります。
そのような場合でも、この新車特約に加入していれば、新車を購入する代金をそのまま補償してくれます。
なお、この特約でに関しでは、新車に買い替えた場合のみ保険金が支払われる会社と、修理の場合も差額が補償される保険会社があります
また、この特約は車両保険付帯の特約のため、車両保険への加入も必須です。
新車買替特約の有無による違い
まず、新車特約に加入している場合と、加入していない場合で、どのように違いが出るのかを見てみましょう。
以下は、400万円の新車を購入し、2年後に車の時価額が320万円になった時点で、事故で車が全損したため、同じ400万円の新車を購入した場合の例です。
特約なし | 特約あり | |
---|---|---|
新車購入時価格 | 400万円 | 400万円 |
車両保険(時価額) | 320万円 | 320万円 |
車両新価特約 | 0円 | 80万円 |
自己負担 | 80万円 | 0円 |
以上のように、特約に加入していない場合に、新車を購入すると、その車の購入時の代金と経年によって価値が低下した分の差額を支払う必要がでてきますが、特約に加入している場合は自己負担は0で新車を手に入れられます。
なお、上の例では車両保険の免責額は考慮していませんが、本来はいずれの場合も車両保険の免責額分は差し引かれますので、その分の自己負担額は発生します。
新車買替特約の適用条件
新車特約から保険金が支払われるためには、車が以下のいずれかの状態である必要があります。
- 全損の場合(修理不能)
- 修理費用が新車価格の50%を超えている
- 車体の本質的構造部分に著しい損害が生じている
この特約は、フレームがゆがんでしまうなど、強い衝撃が加わる事故が起きた場合のみに適用されるため、たとえ内装や外装の修理費用が非常に高価になったとしても、車としての主要構造部分に損傷が少ないと判断された場合は、対象外となります。
新車買替特約で支払われる保険金額
新車買替特約で支払われる保険金は、以下に関するものです。
- 車両本体の価格
- 付属品(オプション)
- 消費税
この新車の購入代金は、もちろん時価額ではなく、この特約に加入した時点での「協定新価保険金額」(契約車と同グレードの新車の価格)が設定されます。
この価格は、2年~5年など時間が経過した後も同じ価格のため、事故にあった車と全く同じクラスの車を購入することができます。(時価額であれば、年々価値は下がっていく)
また、車を新たに購入する際には、自動車重量税、自動車取得税、自動車税などもかかりますが、こういった諸費用は新車買替特約には含まれません。
これらの税金分もプラスして支払ってくれる、「再取得時諸費用保険金」を提供している保険会社もあり、保険会社によって補償額は異なりますが、一律10万円~30万円とする場合や、車両保険金額の10%~20%としているところが多いです。
新車買替特約への加入条件
この新車特約に加入するためには、契約車両が「初年度登録から11~61か月以内」といった条件があります。
この保険会社によりこの期間は大きく異なり、完全な新車レベル以外は補償しないところから、5年目くらいまで補償してくれるところもあります。
また、多くの保険会社では、初年度登録からの年数に関する条件を満たしてさえいれば加入が可能なため、必ずしも新車を購入したタイミングでしか加入できないわけではありません。(一部には「新車価格相当額が車両保険金額の2倍以下の金額であること」も条件としている保険会社もあります)
意外かもしれませんが、中古車であっても、新車買替特約に加入が可能ですので、加入を検討している保険会社の加入条件を確認してみましょう。
新車買替特約の注意点
このように、新車を楽しみたい人にとっては、非常に便利な新車買替特約ですが、車が盗難にあった場合には補償が適用されません。
ただ、盗難後に発見されて、その車が修理不能な状態になっていたり、修理費用が車両保険の保険金額以上になった場合には、この特約による支払い対象になります。
なお、この特約を適用した場合は、次年度の等級もダウンします。