「対歩行者傷害補償特約」とは?具体的な補償例やメリットなどを解説



「対歩行者傷害補償特約(対歩行者等事故傷害補償保険特約)」は、歩行中や自転車に乗っている人を事故で死傷させた場合、たとえ相手に過失があったとしても、その分も補償を上乗せして支払う特約です。



自動車事故では、相手が車であっても、歩行者であっても、最終的には事故に対する過失割合によって賠償額が決まります。相手の過失分については賠償責任が発生しませんので、自分が対人賠償に加入していたとしても、相手に保険金が支払われることはありません。

しかし、歩行者と車で事故を起こした場合は、明らかに歩行者側の被害が大きくなるケースが多いです。そのため、たとえ相手に過失があったとしても、相手に発生した損害を自分の保険から補償するのが、この対歩行者傷害補償特約です。



ここでは、対歩行者傷害補償特約で補償されるケースや補償範囲、加入のメリットなどについて解説します。

なお、この特約は現在あいおいニッセイ同和のみが取り扱っており、かつて取扱いのあった、SBI損保や三井ダイレクトなどでは取扱いを中止しています。


対歩行者傷害補償特約での支払い例

実際にどのような形で補償が行われるか、イメージが付きにくいと思いますので、最初にこの特約で補償された場合の支払い例を挙げてみます。

    <支払いケース例>
    契約車に乗って青信号の交差点を直進中に、自転車搭乗中の相手が交差点に進入し(赤信号)、車に衝突。相手は入院6か月のケガを負った。相手の損害額は、治療費・休業損害・慰謝料などを含め、500万円に達した。
    過失割合は、「自分:相手=80:20」。
支払い額 内訳
自分の過失分
(法律上の補償額)
400万円 500万円に対する過失割合分
(500万×0.8)
 自賠責保険からの補償額 120万円
 対人賠償からの支払い額 280万円 400万円-120万円
相手の過失分 100万円 500万円に対する過失割合分
(500万×0.2)



自分の過失分については、対人賠償に加入していれば補償されますが、相手の過失分である100万円は、そもそもこちらに賠償責任がないため、支払われることはありません。

しかし、この100万円分についても、自分の保険会社から相手に支払うようにできるのが、この対歩行者傷害補償特約です。


補償されるケース・されないケース

対歩行者傷害補償特約で補償される例、されない例としては、以下のようなものが挙げます。

補償されるケース

  • 赤信号にも関わらず、酔って横断歩道を渡ってきた人を轢いてしまい、死亡させた
  • 信号を無視して、自転車で交差点に進入してきた人を轢いて、ケガを負わせた

補償されないケース

  • 自動車同士の事故
  • バイクや原付バイク(原動機付自転車)との事故

補償の対象者と補償範囲

対歩行者傷害補償特約で補償されるのは、相手が以下に該当する場合のみです。

  • 歩行者
  • 自転車の搭乗者

基本的には歩行中、自転車搭乗中の人が対象で、相手がバイクや原付バイクに搭乗している場合は対象外です。

また、補償されるのは、相手が「ケガ・死亡・後遺障害」を負った場合のみで、補償額は対人賠償の上限額と同じです。


対歩行者傷害補償特約のメリット

対歩行者傷害補償特約の最大のメリットは、たとえ相手に過失があっても、相手の損害に対する補償を手厚くすることが出来るため、事故の解決をスムーズにできることです。

もちろん、法律上は自分の過失分以上の支払いをする必要はありませんので、相手の過失分まで補償するこの特約は必要ないと考える人も多いでしょう。



しかし、相手が歩行中に自動車事故にあい、ケガを負ったり、死亡した場合、その損害額は非常に大きなものになりがちです。打ち所が悪ければ、車に乗っている自分はケガすらしていないのに、相手は死亡してしまったということも当然ありえます。

また、逆に自分の家族が歩行中に車に引かれたと想像してみると、理解しやすいかもしれませんが、いくら歩行者の信号無視が原因だったとしても、心情的には被害者側は一方的に加害者が悪いと考えがちです。当然被害者側だけではなく、加害者側の罪悪感も大きいでしょう。



そういった意味でも、この特約に加入していれば、相手に対する十分な補償を行うことができるため、相手も納得しやすく、示談もスムーズに進むでしょう。