「搭乗者傷害保険」は、自動車事故により自分や家族、同乗者がケガ・死亡・後遺障害を負った際に、あらかじめ決まった定額を支払ってくれる保険です。「自動車事故に特化した傷害保険」というイメージで考えるとわかりやすいでしょう。
事故相手からの保険金や、自分の保険の人身傷害から保険金の支払いとは別に、保険金を支払ってもらえます。そのため、人身傷害の補償をさらに手厚くする保険、と捉えることもできます。
過失割合にも全く関係なく、過失割合が100:0であっても保険金は下ります。また、搭乗者傷害から保険金を受け取っても、翌年の等級に影響がありません。
ここでは、搭乗者傷害の補償内容とケース例、そのメリットなどについて詳しく説明します。
搭乗者傷害で補償されるケース・されないケース
搭乗者傷害保険で補償される例、されない例としては、以下のようなものが挙げます。
補償されるケース
- 自動車事故で死亡した
- 自動車事故で同乗者がケガをした
- 自動車事故で家族が大きなケガをし、後遺障害を負った
補償されないケース
- 歩行中や自転車搭乗中に車に轢かれた場合
- 乗っていたタクシーが他の車と衝突してケガをした場合
- 入院中の逸失利益
- 精神的損害
搭乗者傷害は、「自動車事故によるケガ・死亡・後遺障害」に対してのみ補償するものです。そのため、人身傷害保険で補償される、歩行中や自転車搭乗中の事故は補償されません。
また、同様に入院などで働けないことによる生じる逸失利益や、精神的損害なども補償されません。
搭乗者傷害の補償範囲と補償対象・補償タイプ
搭乗者傷害は、自動車事故を原因とする以下の損害に対して補償されます。
- 死亡
- 後遺障害
- ケガ
あくまでも死傷に対する補償で、逸失利益や精神的損害、自分の車の損害などは補償されません。
搭乗者傷害の補償対象
搭乗者傷害の補償対象となるのは、「契約車に搭乗中の人すべて」です。
自分・家族はもちろん、他人であっても、契約車に乗っていて事故にあった人全員が対象になります。また、保険金は一人ずつに対して支払われますので安心です。
搭乗者傷害の補償タイプ
また、搭乗者傷害のケガに対する補償には、保険金の支払い方法によって、主に2つのタイプがあります。
1つは「日数払い」で、入院・通院した日数に応じて保険金が支払われます。もう一方は、「部位・症状別払い」で、ケガをした場所や症状に応じて決まった金額が支払われるものです。
ただ、「日数払い」は病院とグルになって入院日数を延ばして保険金を多く受け取るといった保険金詐欺が増えた影響か、現在は「日数払い」の取り扱いをしている保険会社はほぼありません。
現在は「部位・症状別払い」のみか、「入通院4日目までは一律1万円、5日以降は部位・症状別払い」といったハイブリッド型の補償が主流です。
搭乗者傷害のメリット・デメリット
次に、搭乗者傷害のメリット・デメリットを見てみましょう。
搭乗者傷害のメリット
- 過失割合に関わらず、補償される
- 相手からの賠償金や人身傷害の保険金に上乗せして保険金を受け取れる
- 単独事故・自損事故でも補償される
- 損害額が確定する前(治療中の場合など)でも保険金を受け取れる
- 保険を使っても等級がダウンしない
- 人身傷害保険より保険料が安い
搭乗者傷害のデメリット
- 実際の損害額よりも支払われる保険金が安くなる可能性がある
- 人身傷害保険と補償が被る部分がある
以上のように、搭乗者傷害はメリットの大きい保険ですが、人身傷害保険に加入していれば実損部分は補償されますので、支払いに時間がかかっても、実損額だけ補償されればいいという場合には、加入の必要はありません。
人身賠償と搭乗者傷害との違い
人身傷害と搭乗者傷害は、ともに「自分」の損害を補償するものですが、その違いは自動車保険の中でも最もわかりにくいものです。
ここでは、ごく簡単に人身傷害と搭乗者傷害の違いを説明します。
人身傷害 | 搭乗者傷害 | |
---|---|---|
条件 | 契約車搭乗時以外(他車運転時・歩行時など)の自動車事故も補償(※契約タイプによる) | 契約車に搭乗している場合のみ補償 |
補償範囲 | 治療費・逸失利益・精神的損害まで | 死亡・後遺障害・ケガに対してのみ |
保険金の支払い | 実損払い | 定額払い |
支払われる保険金 | 実際の損失額を算定後に支払い | 死亡・後遺障害保険金、医療一時金のみ支払い |
保険金支払いタイミング | 損害額確定後(相手からの保険金支払いより速い) | 損害額確定前(人身傷害より速い) |
両者の補償は被る部分も多いため、人身傷害のみ加入し、搭乗者傷害には加入しないケースや逆のケースもあります。
保険会社によっては、人身傷害を自動付帯(加入必須)とし、搭乗者傷害を「特約」扱いにして、オプションとしているところあります。
より詳しい違いについては、以下の記事を参照してください。
・人身傷害と搭乗者傷害の違いとは?補償の重複やメリットなどを詳しく解説