「自賠責保険」と「任意保険」の関係は?その違いを詳しく解説



「自動車保険」と一口で言っても、実際には「自賠責保険(強制保険)」と「任意保険」の2つで構成されていることは、すでに説明しました。

ここでは、「自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)」と「任意保険」の種類と違いを、さらに詳しく説明したいと思います。


自賠責保険は強制加入

まず、自賠責保険と任意保険の最も大きな違いは、自賠責保険が法律で加入が義務付けられている(強制保険)ことに対し、任意保険の加入はあくまで任意である点です。

以下は、自賠責保険と任意保険における加入に関する違いです。


自賠責保険 任意保険
加入 義務 任意
未加入の罰則 あり なし
保険料 定額(車種別) 補償によって異なる
加入タイミング 車購入時・車検時 車購入時
保険期間 (主に)2年間 (主に)1年間



自賠責保険、正式名称「自動車損害賠償責任保険」は、個人で加入する人はまれで、車の購入時や車検を通す際にディーラーや工場が手続きを済ませてくれるため、どこの会社の自賠責保険に加入しているかすら知らない人も多いでしょう。

ただ、自賠責保険は強制保険というだけあって、加入せずに車を運転すると厳しい罰則が下ります。

具体的には、自賠責保険に未加入の状態でその車を運転した場合、「1年以下の懲役、または50万円以下の罰金」が科せられるほか、交通違反で即座に「免許停止処分(違反点数6点)」になります。また、自賠責保険(共済)の証明書を所持していないだけでも、「30万円以下の罰金」が科せられるなど、非常に大きな罰則があることがわかります。


自賠責保険と任意保険では補償範囲が大きく異なる

また、自賠責保険と任意保険では補償される範囲が大きく異なります。

自賠責保険は、戦後における経済の高度成長で、車の所有者が増え、自動車事故も激増したことに伴い、交通事故による被害者の救済を目的として、1955年に定められたものです。国の政策として定められたものなので、その補償範囲・補償額は統一されており、また補償される範囲が「被害者の死亡・ケガ・後遺障害」のみに限定されています。



一方、任意保険の場合は、相手だけではなく自分や家族、同乗者に対する被害も補償してくれます。相手が任意保険に入っておらず、十分な補償を得られないような場合でも、自分の保険から必要なだけの保険金を支払ってもらうことができます。

また、各種の特約を付与することで補償をさらに手厚くすることもできますし、事故の相手との示談交渉を保険会社が代行してくれたり、事故で自分の車が破損した際のレッカー処理など、各種のロードサービスを提供してもらうことも可能で、自賠責保険と比べると補償の範囲は非常に広いです。


対象者 補償対象 自賠責保険 任意保険
相手 死亡・ケガ
(限度額低)
○(対人賠償)
物・車 × ○(対物賠償)
自分 死亡・ケガ × ○(人身賠償・搭乗者傷害)
物・車 × ○(車両保険・物損関連の特約)
自分 示談交渉・ロードサービス ×

自賠責保険と任意保険の補償額の違い

次に、自賠責保険と任意保険の補償額の違いを見てみましょう。

自賠責保険が補償するのは、事故相手のケガ・死亡・後遺障害のみです。この3点について、自賠責保険と任意保険の補償額の違いを比較してみます。(任意保険は「対人賠償保険」での補償額で比較)


様態 自賠責保険 任意保険
死亡 3,000万円 最大無制限
ケガ 120万円 最大無制限
後遺障害 75万円~4,000万円(程度に応じた等級で変わる) 最大無制限



実際に支払われる補償額は、事故における過失度合によって変わりますが、大きな事故の場合、最大の賠償額が「億」に達するケースもあるため、自賠責保険では賄いきれないことになります。

一方、任意保険の場合は、補償の限度額を「無制限」にすることができますので、相手に億単位の被害が発生したとしても、その損害をすべて保険で賄うことが可能です。


保険金の支払いは自賠責保険が優先される

実際に人身事故が発生した場合、保険金は自賠責保険、任意保険の両方から保険金が支払われます。

まずは、自賠責保険から優先的に支払われ、不足分が任意保険から賄われます。それでも不足する場合は、加害者が自己負担することになってしまいます。

また、事故時に自賠責保険が切れていた場合は、任意保険から保険金は支払われますが、本来自賠責保険で賄われる分は支払われないため、任意保険に加入していれば自賠責保険への加入は必要ないとも言えません。



なお、同じ車でも、自賠責保険と任意保険の保険会社が異なるケースはよくあります。任意保険は、車の保有者が自分で選んで入りますが、自賠責保険は車検を通したディーラーや工場などが手続きをしてしまうのがほとんどだからです。

そのため、本来は保険金を支払うために、自賠責保険と任意保険の両方に手続きを行う必要がありますが、基本的には「一括請求」といって、加入している任意保険の保険会社が、自賠責保険への手続きも行ってくれますので、安心です。


任意保険の加入率

任意保険は、名前の通り加入は任意です。

自動車事故で発生する損害は、自分が賄える金額より大きくなる可能性が高いため、任意保険への加入は必須と言えるのですが、実際には任意保険に加入していない人もいます。

実際にどのくらいの人が任意保険に加入しているかを見てみましょう。



全国の任意保険加入率(2016年3月末)

対人賠償 対物賠償 人身傷害 搭乗者傷害 車両保険
加入率 74.1% 74.2% 68.0% 29.3% 43.5%

※損害保険料率算出機構の「自動車保険の概況」2016年版より抜粋



この加入率は、任意保険に加入している車の台数を、全国の車検を通してある車の台数で割った物です。この数値には共済などの加入率が含まれていないため、実際の加入率はもう少し高く、85%程度です。

中には車検は通してあるけれど全く乗っていない車や、田舎の畑の道しか走らない車なども含まれていると思いますので、こういった車には任意保険は不要と考える人が多いかもしれません。

しかし、人身事故で相手が死亡した事故の4割は、賠償額が4,000万円を超えており、億に達するケースも多いため、決して自賠責保険だけでは十分とは言えません。そのため、補償内容はある程度限定したとしても、任意保険への加入は必須と考えましょう。