自動車保険の加入は絶対に必要?その理由は?



自動車保険は、事故を起こさず、保険金を払ってもらうことが一度もなくても、毎月(毎年)支払いが発生します。ドライバーの年齢が若い、車が高価といった場合には、保険料の年額が10万円を超えることも多く、家計の大きな負担となっている人も多いでしょう。

そのため、特にお金に余裕がない人の場合、そもそも任意保険に入らなければならないのか、という疑問を感じることもあるのではないでしょうか。

ここでは、実際の損害賠償例などを確認しながら、自動車保険に加入する必要性自体について、あらためて考えてみたいと思います。


自分が加害者になった場合の損害額は億を超えることも

そもそも、自動車保険を含めた損害保険というものは、いざ損害が発生したときに補償をしてくれるものですが、実際に自分が加害者となって事故を起こした際に、どのくらいの賠償金が発生する可能性があるのか、その具体例を見てみましょう。

以下は、過去の実際に発生した自動車事故に対する、高額損害の判決からいくつかの例を抜粋したものです。


認定損害額 判決年月日 被害者の職業 年齢/性別 被害状況
5億2853万円 H23.11.1 眼科開業医 41歳/男性 死亡
3億7370万円 H26.8.27 小学生 7歳/男性 後遺障害
3億5332万円 H18.9.27 アルバイト 37歳/男性 後遺障害

※損害保険料率算出機構の「自動車保険の概況」2017年版より抜粋



医者など元々収入が高い人に対する補償が高額になることは理解できると思いますが、上の例に挙げたように、小学生やアルバイトの身分であっても、億を超える賠償金が発生することがあります。

仮に賠償金を3億円とした場合、この内の3,000~4,000万円分は強制保険である自賠責保険で支払うことが可能ですが、もし任意保険に加入していなければ、残りの2億6000~7000万円を自腹で支払わなければならないことになります。



独立行政法人労働政策研究・研修機構『ユースフル労働統計-労働統計加工指標集-2016』によると、大卒サラリーマンの生涯賃金は2億7000万円です。つまり、その生涯賃金のほぼすべてを、賠償金として支払うことになることを意味します。死亡させたり、後遺障害を残してしまった相手の家族は当然ですが、自分自身やその家族までもどん底に落としてしまう結果になりかねません。

もちろん、すべての人にこのように巨額な賠償が発生するとは限りません。しかし、万一そのような事態が発生した時に、あなたはその損害を補償することができるでしょうか?

自動車を運転するということは、常にそういった大きな損害賠償の責任を負う可能性があるということは確かです。


自分が被害者の場合でも自分の保険で補償される

また、逆に自分が被害者となった場合を想定してみましょう。

自分が被害者になった場合、小さな子供を残して死亡してしまったり、命は無事だったとしても、寝たきりになってしまって働けなくなり、長期に渡る介護が必要になる可能性もあります。

そのような場合、加害者である相手が任意保険に入っていれば、相手の保険会社から保険金が支払われ、自分の損害に対しては補償されます。



しかし、もし相手が任意保険に加入していなかったらどうなるのでしょうか?

もちろん、相手に損害賠償を請求すること自体はできますが、相手に支払い能力がない場合は、賠償金を支払ってもらうことはできません。また、相手が支払ってくれるまでに時間がかかってしまう場合、入院費などを一旦自腹で払う必要がありますが、貯金などに余裕がなければ支払いに困る事態になることもありえます。

そのような場合でも、自分自身が任意保険に入ってさえいれば、自分の「人身傷害保険」や「搭乗者傷害保険」、「無保険車傷害保険」などから、損害に応じた保険金を支払ってもらうことが可能です。

このように、他人に対する賠償だけではなく、自分に対する補償のためにも任意保険は大いに役立つわけです。


任意保険が必要ない唯一?のケース

ただ、中にはこのような状況を理解したうえで、任意保険に加入しない人もいます。

それは、仮に大きな損害が発生したとしても、その損害を補償できるだけの財力がある場合です。



その一つとして、様々な交通事故についての実態を暴露している「示談交渉人裏ファイル」に見られるケースを挙げてみます。

著者である浦野氏は、とある運送会社に示談交渉人として働いていました。その会社では運送業務に利用するために、多くの車を所有していましたが、所有している車全部に保険を掛けると毎年当然莫大な保険料が発生します。

そのため、あえて任意保険には加入せず、その保険料分をストックすることで、万一事故が発生した際にそのお金から賠償金を支払うようにしていました。このシステムが有効なのは、仮に損害賠償が発生したとしても、ストック分で賠償金を支払うことができるだけの財力があるからです。

しかし、私たち個人の場合では、大きな損害を賄うだけの貯蓄をすることは非常に困難でしょう。


お金がない人ほど保険は手厚く

任意保険に加入するとしても、年齢が若ければ任意保険料が非常に高くなりますし、収入や貯蓄が少ない人は、補償は最低限にしてできるだけ保険料を安くしたいと考えるでしょう。

しかし、上に挙げたように「損害が発生したときに補償できるだけのお金を持っている人だけは保険に入る必要がない」、という理屈を裏に返すと、「お金がない人ほど保険を手厚くする必要がある」ということが言えることがわかります。



上に挙げた例のように、自分が加害者で相手に億の損害を与えた場合、または相手が加害者で、かつ支払い能力がない場合などを想定してみましょう。はたして、自分は発生した損害を自腹で補償することができるでしょうか。

もちろん、必要のない補償や特約までつける必要はありませんが、事故が発生したときに自分の手に余る額の損害が発生する点を考えると、保険料をケチってはいけないことがわかります。

特に「対人賠償保険」「対物賠償保険」など、損害が億に達する可能性があるものについては、しっかり「無制限」で補償をつける必要がありますし、自分側の入院費などを負担できるだけの貯金などがない場合は、自分側の被害を補償する「人身傷害保険」などもしっかり加入しておきましょう。